2016年3月19日土曜日

2016/03/16(水) IEICE総合大会

●2016年 電子情報通信学会(IEICE)総合大会
九州大学伊都キャンパスで開催された大会に参加した。午前中の最初のセッションでNaさんがC3POの研究成果を発表するのを聴いた。そのあとも夕方までキャンパスにいていろいろな発表を聴いて、ときどき余計な質問やらコメントやらをした。

★授業支援システムにおける基幹システムの設計・開発
正直なところ発表そのものはあまり印象に残らなかった。発表内容のうちどこからどこまでが発表者らの貢献でどれほどのインパクトがあるのかよく解らなかった。しかし、質疑応答の中で「オブジェクト指向データベースを自前で作った」という話が出てきたので、詳細は不明ながらそりゃすげぇなぁと思った。

★授業における演習の進捗状況把握支援システムの開発
おおむね良かったように思うが、途中の演習チェックの説明がちょっと言葉不足で、案の定ここについて質問された。

★ゲーミフィケーションを用いた学習意欲を高める学習管理システムの開発
“ゲーミフィケーション”という言葉を知った。2015年度のKaくんの卒業論文でもこの言葉を使えば格好良かったなぁ。

★Cluster-Based Replication of an e-Learning System on Unstable Networks
Moodleのレプリケーションをすることで複数地点間のコンテンツ共有を実現する。インドあたりの電力事情はよくなくてネットワークが不安定なので、比較的安定している夜間にレプリケーションを行う。推察するに、共有する“コンテンツ”とは教材のみであり、受講者のデータなど各校特有のデータを共有しないので、更新喪失も発生しないということであろう。

★Energy Management for Supporting E-learning System in Unstable Networks
この前に発表されたシステムの基盤であるとのこと。ネパールのカスキ地区という地名が出てきた。

★理解状況把握のための自信度統合S-P表の提案
学生が問題の解答と一緒に自信の有無を入力する。自信ありの正解を「1+」、自信なしの不正解を「0-」のように表記する。これにS-P表を応用して学生の理解度を数値化して、学生への指導に役立てる。
S-P表というものはこのときに初めて知った。勉強になった。
単純に「1-」や「0+」の個数を数えるよりも効果的な指導ができるのかどうかが気になった。この発表の方式ではある程度の学生数が必要であろうが、単純に個数を数えるだけであればごく少人数だけでも可能である。単純個数を降順にソートして、上から順に指導対象にするようなやり方でも、全体としては大きな違いが無いような気がする。

★スマホを用いた理解度を確認しながらの授業
スライドが見づらかった。

★ノーティング動作の解析による学修タイプの分類
受講者がデジタルペンやタブレットで電子的にノートをとることが増えるであろうから、ペンの接地状態を記録し、これを見て受講者の状態を推定・分類する。発表では人間が記録を見て分類するという話であったが、実用的には自動化されるべきであろう。ペンの座標情報をもとにノートそのものを再現できるということであるから、人間が見るのならペンの接地云々よりノートそのものを見るほうがいい。「ノートの取り方が上手」「下手」を自動的に判定できるなら有用であろう。

★スピーチ指導のための顔特徴点を用いた話者頭部の動き解析
この発表で“パブリックスピーキング能力”という言葉を覚えた。
プレゼンテーションに関するプレゼンテーションをすることは難しい。ずっと発表者の頭部の動きを見ていた。

★指示棒検出によるプレゼンテーション支援システム
指示棒の両端に色を付けておき、その動きをカメラで検出させることでPCに命令を送る。将来的にはスクリーンへのポインティングにも使いたい。椎尾さんのviewpointを思い出した。
スライドを切り替えるときに学生が気をそらす(だるまさんが転んだ現象)という問題設定は、ネーミングの面白さはあるものの、そんなに大きい問題かなぁというのが率直な感想である。事実、この発表者は手元のデバイスで非常に要領よくスライドを切り替えていた。教室における教壇や機材の配置によってはもっと時間がかかるのかもしれないが、現在ある技術で十分解決可能な問題ではないか。
スクリーンをカメラに収めるためには、カメラの設置場所が問題になるように思う。単に動きを検出するだけなら、スクリーンまでがカメラから見える要はなく、カメラは教壇の端にでも置いておけばいいかもしれない。あるいは白い背景としてスクリーンが必要であるなら、スクリーンに投影するスライド資料の背景色は白っぽいものに限定される(この発表の資料もそうであった)。
タブレット端末を手元で操作し、指示棒も電子的に再現してスクリーンに投影するなら、既存の普及技術で十分可能である。しかし、指示棒に他の役割を持たせられれば話は違ってくるかもしれない。

★地域イベントのためのスマートフォンアプリ開発―ARクーポン機能を中心に―
質疑応答のときに出た、ARマーカーがマーカーらしく見えないと使ってもらえないという話は面白かった。

★スマートフォンを利用したバリア情報収集・システム「バリアマップ」
質疑応答のときに出た、本当にバリアが高いところの情報は健常者でなければ収集できないという話は面白かった。

★物体特徴マッチングによる複数作業映像の時間的対応付け
熟練者と初心者それぞれの作業する模様を録画し、これら二つの映像の時間的な対応をつけておくことで、作業の教材として役立てる。
どういう場合にこのような映像が教材として役立つのかがピンとこなかった。

★ARを用いた可視化による情報工学系実習教育支援システム
ARを使うキッカケに工夫があるという話であったが、同時にそれが難しいところでもあるらしい。

★筆跡鑑定用文字切り出しソフトウェアの改良
発表内容以上に、福岡県警の人がとてもにこやかに発表されていたのが印象的であった。

★学生の進捗度把握機能を有するプログラミング演習支援システム
学生がPCにプログラムを入力したときの履歴を教員のPCで再現できるようにして、演習の指導に役立てる。
大勢の進捗状況を把握しなければならない教員に、一人一人の状況を詳細に見る余裕はない。そこで、いかにして必要な情報だけを抽出するかを工夫するのが普通の発想であるように思う。この研究は逆アプローチで、入力の経過まで全て記録し、動画として再生しようということのようである。個人的には学生の入力途中のプログラムそのものが見えれば十分という気がするが、それに加えてそのプログラムのどの付近に時間ないし手間をかけているかが色か何かで可視化されるなら面白いかもしれない。

★中学生向けRuby学習教材の開発
Scratch的なRuby学習用システム。
質疑応答のときに、フローチャートは初学者には理解されないという話があって面白かった。教材の中にRubyのコードがありブロック表示もあるので、その上さらにフローチャートまで表示するのは余計であるという指摘は誠にもっともであった。

★多言語サービスコンピューティング環境を利用した環境教育プログラムのためのFMCモデルの提案
中国語―英語―日本語の自動翻訳システムをはさみ、中国の家庭と日本の大学院生とかをつなぐ教育手法。
世の中に遠隔授業の需要は常にあるし、自動翻訳が実用的な水準に達していれば国境や言葉の壁を超えることも普通になっていくのであろう。
学習意欲のある子供を介して家族や地域会を教育する child-mediated communication や、家族を介する family-mediated communication (FMC) という話も面白かった。

★環境教育分野における建物性能評価ツールのユーザ支援環境の構築
直方体の位置・大きさを入力するためには、全ての頂点座標を入力しなくても2点のみ入力すればよい。確かにそうである。なぜ気付かなかったのであろう。2014年度の卒業研究でKくんが学部棟のデータを入力するのに苦労していたが、その入力を支援するシステムを作るほうが卒業研究としては楽しかったかもしれない。

★タブレットPCを活用する授業のための支援ツールの開発
どういうわけか印象に残っていない。

★連立一次方程式解法理解のためのタブレットPCを用いた教育用ソフトウェア開発
二元一次方程式の解法は道筋がはっきりしているので、これを把握したうえで数字を埋めていけばほとんど機械的に解くことができる。この過程を支援するアプリ。
発表中にぐいぐい動くデモを見せてくれたので大変感銘を受けた。2次式の因数分解、2次関数の頂点座標、微分・積分などにもある程度応用できるであろう。一方で、そういうアプリがとっくにあってもおかしくないような気もする。この発表のアプリがどの程度目新しいのかは私にはわからない。
質疑応答の際には、あてずっぽうに数字を入れていっても解けるのではないかという指摘があった。これはその通りであるから、教材として考えるならアプリの表示の中にもっと解説的な要素を入れる必要があると思う。

★Androidタブレットを用いたグループワーク向き画像転送機能の実現
学生側システムと教員側システムをソケット通信で接続し、問題への解答として画像等を提出できるようにするシステム。当初は学生側システムをサーバに、教員側システムをクライアントにして開発していたが、それをやめてこうなったとのこと。別にサーバを立てて、学生側システムも教員側システムもクライアントにするほうが簡単のような気がする。

2015年度のKaくんの卒業研究にも同じことが言えるが、HTTPやHTMLといったWebの仕組みに乗っかるほうが話が簡単になることが多い。これを避けようとすると自分でWebブラウザやWebサーバに相当するシステムを再発明しなくてはならない。学生は自分の学習コストを軽くすることを重要視する傾向があるので、部分的な再発明をして、その結果として開発に手間をかけたわりには既存のものに見劣りするというのはよくあることである。

★空間理解のためのインタラクティブ教育支援システム
3Dシステムのデモンストレーションと考えると、オープンキャンパスとかでは受けるんだろうなという気がする。

●電子錠登録・登録抹消
教務課のKさんからメールで、学位授与式のあと進学予定者からは旧学生証を回収しないことについて回収担当者に周知した旨の連絡があった。これについて、当の学生にも周知してほしい旨を、その所属研究室の先生がたにメールで連絡した。

●新入生オリエンテーションの準備
これまでのまとめを作成した。

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